病院長自ら「熱中症の患者は3度おいしい」と言ってた話

最近すごく暑くなってきました。今年の夏は猛暑になると言われているようですね。そして夏になると増えてくるのが熱中症の患者さんです。毎年この時期を過ぎると、ほぼ毎日のように熱中症の患者さんが救急車で運ばれてくるようになります。スポーツの大会で熱中症になる子供さんもいれば、畑や田んぼで倒れているようなおじいちゃんもいます。中にはエアコンをつけずに35℃くらいになった部屋の中で、ぐったりしているところを発見されて救急搬送されるような高齢者もいます。「エアコンは体に悪いから」って昔から信じている方も多いのですが、昔と今では夏の暑さに大きな差があるため、「エアコンを使わないと、熱中症であの世に逝ってしまうかもしれませんよ」って説明するのですが、ほとんどの方は聞く耳持たずといった感じです。（仕方ないかも…）

その一方で、熱中症の患者さんを受け入れる側の病院はどうかというと、一部の先生の中にはとんでもなく歪んだ考え方を持っている人もいます。そこで今回は、熱中症に関して僕がまだ若かりし頃にアルバイトに行っていた田舎の病院の話をしようと思います。その病院は診療所に毛が生えたくらいのこじんまりとしたど田舎の病院でした。過疎地の私立病院で、経営状態もかなり厳しい状況だと風の噂で聞いていました。入院している患者さんも少なくて、外来の待合にも患者さんがほとんどいませんでした。まさに閑古鳥が鳴いている状態だったのです。そんな病院ですがやっぱり慢性的に医者不足の状況が続いていました。院長（兼・理事長）先生がほぼ一人で切り盛りしていたので、出身大学の医局の若手の医師が、代わる代わる応援に行ってたのです。

僕は三ヶ月間限定でその病院のアルバイトを担当したのですが、ちょうど今くらいの季節だったと記憶しています。雨が何日も降り続けたり、明け方急に寒くなったり、そうかと思えば急に真夏日になったりして、その年も天気がとても不安定でした。いよいよ梅雨が明けようかという頃になると、カンカン照りの強い日差しの日が増えてきます。そして近隣の村では田植えのシーズンが始まります。そんなある日、院長先生と休憩室でランチをしながら話をする機会がありました。僕は「これだけ暑くなってくると、この辺りでも熱中症の患者さんが増えてきますよね？」と、いかにも世間話っぽい話題を切り出したのでした。

閑古鳥が鳴いている病院と言えど、暑い季節になると熱中症の患者さんは増えてくるはずです。普段、あまり顔を合わせることがなかった院長先生と、ランチの時間（30分くらい）を無難にやり過ごすには、この熱中症の話題くらいがちょうどいいだろうという目算でした。僕の方をチラッと見た院長先生は、何も話さず自分の弁当を黙々と食べ続けました。会話が続かないことを恐れた僕は、病院の経営のためにちょっとくらい気の利いたことも言っとかないと気まずいな…と思い、「もし熱中症の患者さんが来たら、病院のために全員入院させときますね」と続けたのでした。すると院長先生は弁当を食べる箸を止めて、ニヤリとしながら顔をこちらに向けて、お茶を一口飲んでからこう言ったのでした。

「熱中症の患者はおいしいな…。点滴だけしとけば元気になるし。でも脱水で脳梗塞になったらもっと長く入院してもらえるな。その患者がフラフラして転倒したら骨折するかもな。そうなったら整形外科医に診てもらって、さらに入院期間を延ばせるな…ふふふ」

僕には院長先生のニヤリとした顔が一瞬、悪魔のように見えました。僕は期間限定のアルバイトの医者だったので、その病院がどのように経営されているのかなんて知る由もありませんでした。院長先生の話を聞いている限りでは、一人の患者さんの入院期間が長ければ長いほど利益が上がるようなシステムである印象を受けました。最近の急性期病院では、一人の患者さんの入院期間なんて短ければ短いほど、そして患者さんの入れ替わりが多ければ多いほど利益が上がる仕組みになっています。しかし、田舎の私立病院で閑古鳥が鳴いているような状況では、一人の患者さんを（その院長先生の言葉を借りるのであれば）しゃぶり尽くすしか利益を上げる方法がないという印象を受けました。

しかし医療というものは本来そうあるべきではなくて、熱中症の患者さんなんて点滴して元気になれば、早急に退院して元の社会生活に戻っていただくことが一番なのです。少なくとも医療従事者である病院長が「脱水で脳梗塞にでもなってくれれば、さらに病院が儲かるな…うっしっし」みたいなことを考えるなんて危険な発想です。しかし、どんなに閑古鳥の鳴いているような田舎の病院でも、赤字続きで閉院してしまっては地域住民の人たちにとって大変困ります。僕がまだ若い頃、この手の病院にはよくアルバイトに行かされていましたが、どこの病院でも病院収益を上げるために「できるだけ検査を出してほしい」とか「できるだけ患者さんの通院回数を増やしてほしい」と、経営者側に頼まれていました。

そうしなければ田舎の病院は存続できないし、そうすると国の税金がどんどん使われることになるし、そうしなければ地域医療が崩壊してしまうし、そうすると増税せざるを得なくなるし、そうしなければ病気になった人が普通の医療を受けることができなくなるし…これってほんと難しい問題ですよね。僕も医療従事者の端くれなので、病院経営を意識しつつも税金の無駄遣いをしないような医療を心がけていきたいものです。話のついでにですが、もし病院というブラックボックスにご興味のある方がいるようでしたら、僕が以前務めていたことのあるDQNな病院についても【完全実話】の記事を書いてるので、ご参考までにどうぞ。

【完全実話】DQNな病院に関する記事

・世に出してはならないレベルの医者

・悪い開業医にぼったくられないようにしよう

・赤字の公立病院の働かない医者たち

・「保険金詐欺」の手助けをしている病院の話

・”超”金持ちドクターからの糞メール

それではまた^ ^