今から20年くらい前の若かりし頃、その当時一番仲の良かった友人と通いつめた一軒のバーが岡山県倉敷市にあります。先日、うちの奥さんとたまたま岡山までプチ旅行をしたのですが、せっかくなのでそのバーを久しぶりに訪れてみることにしました。岡山県のJR倉敷駅から歩いて10分くらいのところにあるレゲエバー「ドゥービー（Dooby）」という名前のバーです。
ドゥービーは古いマンションビルの一階にありますが、初めてここを通った人が、この胡散臭い扉を開いて中に入ろうなんて絶対に思わないと思います。少なくともうちの奥さんは「こんなところに入って大丈夫なの？」と、気味悪がっていました。僕も一番最初に友人に連れてこられた時は、怪しげな雰囲気がとても不安になって「ここって本当に大丈夫なの？」って聞いた記憶があります。
扉を開けて中に入ると、お客さんは一人もいませんでした。週のど真ん中の平日なので、バーで深夜までお酒を飲みたいなんていう人は少ないはずです。20年前と同じくお店の中にはボブ・マーリーの曲が流れていました。僕が通っていた当時は蝋燭の火だけの暗いバーでした。そして床は大量のピーナッツの殻で埋められてフカフカしているはず…でしたが、硬い床をしっかりと感じる程度しか殻クズが落ちていませんでした。防災指導みたいなのが入ったのか、きれいになりすぎて少し残念ではありました。
壁にはボロボロになったボブ・マーリーのポスターが貼り付けられていました。おそらく僕と友人が20年前に通っていた当時のままのはず…ですが、いつも相当酔っ払った状態でこのドゥービーにたどり着いていたので、記憶は定かではありません。でもあの当時はラム漬けになってしまうんじゃないかというくらい、深夜遅くまで二人でマイヤーズ・ロックを飲み続けていました。
先代のマスターは大阪に出ていかれたということで、残念ながら再会することができませんでした。新しい（？）マスターに「マイヤーズをロックで…」と言いかけたのですが、ふと「ラムって、マイヤーズ以外にも何かおすすめありますか？」と尋ねてみたところ、この2本のラムを勧めてくれました。そしてニコッとしながら「このサカパ（向かって左）は23年ものです。ラムというお酒は寝かせれば寝かせるほど美味しくなりますよ」と言葉を添えてくれました。結論、この「サカパ」と「ディプロマティコ」はめちゃくちゃ美味しかったです^ ^
20年前の当時、たまたまカウンターの隣席に座ってきた70歳くらいのおじいちゃんのことを思い出してしまいました。普段は若いお客さんばかりなので、そのおじいちゃんは少し浮いた存在に見えました。しかしお酒が進むにつれて、僕たちは少しずつ話をするようになりました。そのおじいちゃんは「貯金なんてほとんど無くて年金暮らしなんだ」と言ってました。こうやって月に一回ほど飲みに出るのが一番の楽しみなんだと、顔をくしゃくしゃにして美味しそうにウィスキーのようなお酒を飲んでいました。僕と友人もベロンベロンに酔っていたので「毎晩でも飲みに来ればいいじゃないですか〜」みたいなことを言いました。するとそのおじいちゃんは「酒なんて月に一回でも飲めればいいんじゃ」と言いました。そして笑いながらこう続けて言ったのでした。
「あるもので満足できれば幸せだし、ないものを欲しがるから不幸になるんじゃ。この歳になれば、お金もそんなに必要なくなるよ」
その夜以降、そのおじいちゃんと再会することはありませんでした。月日はあれから20年くらい経ったので、すでに亡くなっているかもしれません。どこの誰だかわからない人の言葉が、こうやって今でもそのバーに紐付けされて残っているのは不思議だと思います。僕に手術を教えてくれた上司の言葉や、先輩、同僚、後輩など「これは名言だ」と思った時はすぐにメモするようにしてきましたが、あの時のおじいちゃんの言葉はメモなんてしなくても強烈に記憶に残っているので不思議です。また友人とも一緒にドゥービーを訪れて、あの時のバカ話を思い出しながらラム漬けになりたいのもです。
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＜お店情報＞
▶︎店名：Reggae Bar Dooby（ドゥービー）
▶︎住所：岡山県 倉敷市 阿知 3-22-7 倉ビル1F
▶︎電話番号：（086）424-0043
それではまた^ ^
