🌀ぐるぐるねこ男ブログ🌀

ぐるぐるねこと一緒に暮らしている男の雑記ブログです。週2回(月・木)更新中🎵

「最善を尽くす」とは?

ぐるぐるねこ男

 

僕は今年から年賀状を送ることをやめました。毎日にように届く年賀状に対して、その旨を伝える手紙を書き、そしてその手紙にE-mailアドレスを書き加えておきます。これから新年の挨拶を含め、連絡を取り合うのはE-mailのみで行うことにしようと提案していくつもりです。来年以降、我が家に届く年賀状に関しては一切返信をしないということも書きました。一方的に送りつけることしかできない「年賀状」という文化に、僕自身、終止符を打つことにしたのです。(だって一枚63円だよ?このDX時代にあり得ない!)

 

毎年たくさんの年賀状が届きますが、その中でも忘れられない後輩医師からの年賀状もありました。その後輩は僕が勤めていた総合病院に研修医としてやってきました。性格が良くて優しいヤツ(=男)なのですが、ちょっと不器用で人よりも仕事に時間がかかる研修医でした。そんな彼を3ヶ月間、直接指導する立場になった僕は、毎日のように時間をかけて彼を指導していました。研修期間の最後に、彼に学会発表をしてもらおうという上級医の提案もあり、残り2週間で学会で発表するためのスライド作りをしてもらうことになったのです。

 

事件は学会発表前夜に起きました。その日も夜遅くに仕事が終わり、家に帰ろうとしていた時に彼から電話がかかってきました。救急患者さんでも来たのかな?と思って電話に出てみると、電話の向こうで彼は恐る恐る次のように言ってきたのでした。

 

「すみません…明日の学会のスライドができてなくて…」

 

電話がかかってきた時点で夜の10時が過ぎようとしていました。学会発表は翌日です。その時点で発表のスライドが完成していないということは、結構ヤバい状況です。彼が何かを言いたそうだったので、僕は黙って彼の言葉を待ちました。すると彼は次のように言葉を続けたのです。

 

「自分なりに最善を尽くしたのですが…」

 

僕は彼のスライドが完成していないことを薄々感じていました。でも、彼の今後の医師としての成長のことを考えると、こちらからそのことについて話を切り出すわけにもゆかず、ただじっと待っていたのです。もしかしたら、自分なりに発表のスライドを完成させていて、最悪の場合、当日の発表の前に手直ししてあげればいいかなあと思っていたのですが、案の定、スライドの準備は完成していなかったのです。僕は「やれやれ…」と村上春樹調にため息をつき、彼のためにこう言ったのでした。

 

「本当に”最善を尽くす”って意味を知ってる?”最善を尽くす”ってことは、こうやって誰かに頼ることまでのことを言うんだよ。もっと早く相談しなきゃ(笑)」

 

って明るく電話で答えてあげました。彼は少しの沈黙の後で半泣きになりながら「すみませんでした…」と言ってました。その後、彼のスライド作りを明け方まで手伝って、翌日の学会発表に間に合わせることができました。学会の後の打ち上げの時に、酔っ払った彼からすごく感謝されました。驚くほど泥酔した彼は、涙ぐみながら「先生のおかげで”最善を尽くす”の本当の意味が分かりました!」と言ってくれました。

 

思わず発した言葉が、相手の心にすごく響くこともあるんだってことを、僕自身も初めて気がつかせてもらいました。彼からの年賀状を見ると、いつもその時のことを鮮明に思い出してしまいます。意外と年賀状も悪くないなあと思いつつ、来年以降は年賀状をやめようと思いました。(だって一枚63円だよ?このDX時代にあり得ない!)

 

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それではまた^ ^