昨日の夜、家で焼肉をしていて思い出したことがあります。僕の両親は家が貧乏だったので、中卒で働き始めました。母は家で夜遅くまで内職をし、父は工事現場で一年中働いていました。全国の工事現場に出張しながら働いていたので、父と一緒に生活をした記憶がほとんどありません。父が半年ぶりくらいに家に帰ってきた時は、子供心ながらやっぱり嬉しかったです。
僕の父は、勤務先の建設会社（とは言っても下請けの小さな会社ですが）の社長さんにとても気に入られていました。父が久しぶりに家に帰ってきたタイミングで、その社長さんに誘われて一緒に焼肉に連れて行ってもらいました。社長さんの家の近くの本格的な焼肉屋でした。小学生だった僕は焼肉屋に行くのはその時が初めてだったので、あまりの美味しさに箸が止まりませんでした。そんな僕の姿を見て、その社長さんが笑顔で言ってくれた言葉を思い出したのです。
「大人になったら月に一回、焼肉を腹一杯食べれるくらい”お金”を稼がなきゃダメだぞ」
そう言ってくれた社長さんがすごくかっこよく見えました。僕の家も貧乏だったので、この言葉は胸に沁みました。僕は感情を表に出すタイプの子供ではなかったので、その言葉を聞いて心の中で「絶対にやってやる！」と強く決意した記憶が残っています。そして僕は黙ってジュージュー焼ける肉を食べ続けました。
月日は流れ、僕は大人になり、その社長さんに言われた通り「月に一回、焼肉を腹一杯食べべれるくらい”お金”を稼ぐことができる」大人になりました。社長さんが言ってくれた言葉のおかげで頑張れた時もありました。本来なら、その社長さんにお礼を言いたいのですが、すでに亡くなられています。僕と父に焼肉を食べさせてくれたあの日からちょうど一年後に、自殺して自ら命を絶ったのでした。
世の中が不景気になって、急に仕事が無くなりました。そして、自分の会社の従業員に給料を払うことができなくなってしまいました。精神的に追い詰められてしまった社長さんは「申し訳ない」と一言だけの手紙を残し、自分の父親のお墓の前で大好きだった日本酒を大量に飲んで、首を吊って自殺したのです。
昨日の夜、家で焼肉をしていて、ふと昔のことを思い出しました。でも、いろんな人のおかげで今の自分があるんだってことに、あらためて気がつかされた夜でした。
それではまた^ ^
