僕の勤務先の病院には「ウィンドウズ2000」とみんなに(陰で)呼ばれている先生がいます。元々の「ウィンドウズ2000」は、マイクロソフトが2000年に発売したOSですが、今の時代にこの古いOSを使っているパソコンは皆無と言っていいほどの骨董品レベルのOSです。
さて、その「ウィンドウズ2000」と(陰で)呼ばれている先生ですが、午前8時に出勤したら、窓際に位置する自分の席に座ってコーヒーを飲みながら医局の秘書さんと1時間ほど談笑します。秘書さんも自分の仕事があるので片手間で相手をしているようですが、忙しい時は険しい表情を垣間見ることがあります。
僕も含めた他の医師は、午前9時には各々の仕事を始めていますが、その「ウィンドウズ2000」は病院の関連施設の施設長という”名義貸し”が主な仕事なので、何もすることがありません。誰もいなくなった医局で時々スマホを弄りながら、ランチタイムまで椅子の上でいびきをかいて眠り続けます。ランチは製薬会社さんが勉強会のために持ってきてくれる高級弁当を食べているようです。自分の診療科とは全く関係のない薬の勉強会に”弁当をもらうため”だけに参加しています。
ランチが終わり、お腹いっぱいになったらお昼寝タイムです。時々目を覚ましてはスマホをいじり、そして誰かが持ってきたお菓子を食べてまた眠りに落ちます。それの繰り返しで終業時間を迎え、いつものように「お疲れ様〜」と捨て台詞を言って、少しフライング気味のタイミングで帰路につくのです。それでも立場は常勤医なので年収2,000万円を軽く超えてしまうのです。
もうお分かりかと思いますが、この先生がなぜ「ウィンドウズ2000」と(陰で)呼ばれているのかというと、その理由は以下の通りになります。
・窓(ウィンドウ)の近くの席でずっと寝ている
・骨董品のような時代遅れの医療レベル
・それでも年収2,000万円超え
ちなみに僕は人の悪口を言わない主義なので「ウィンドウズ2000」とは呼ばず、その先生がいないところでもちゃんと「◯◯先生」と呼んでいます。でも、こんな仕事の仕方をしていて本当に幸せなんだろうか?って常々思います。施設長の名義貸しだけではなくて、ちゃんとその施設に行って入所している高齢者と時間をかけて話をしたり、施設のスタッフとコミュニケーションをとって問題解決に努めるとか、やることなんて沢山あるのになあって思います。結局のところ「自分の今の仕事が嫌いなんだ」と思いました。
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以前、うちの子供に「勉強は何のためにするの?」と聞かれたことがあります。その時僕は「自分のやりたい仕事に就けるように勉強するんだ」と答えていました。しかし、この「ウィンドウズ2000」に遭遇してからは考え方がちょっと変わりました。そして今なら「勉強は何のためにするの?」と言う質問に対してこう答えると思います。
「自分がやりたくない仕事を、しなくてもいいようにするために勉強するんだよ」って。
それではまた^ ^