「やまない雨はない」とは言うけれど

「やまない雨はない」という言葉があります。これはツラい境遇や立場に置かれている人を慰めたり、前向きな気持ちになるように励ましてあげるための言葉です。ツラい事もいつか終わりを迎え、その後には幸せがやってくるといった意味です。でも本当にそれでいいのかな？って思います。

僕自信の話になりますが、研修医になったばかりの時に、直属の上司から強烈なパワハラを受け、約一年間いじめを受け続けました。その上司の手術の手伝いに行けば「お前なんか邪魔だから来なくていい。出ていけ」と言われたり、逆に手術室に行かなければ「何で手術に来ないんだ？お前はそれでも医者か？」とも言われました。挨拶をしても無視されるし、僕が病棟で仕事をしているのを見つけると「チッ…」と舌打ちをされたりもしました。それ以外にも陰湿なイジメ行為が多々ありました。

いじめられている僕を見ていた周りの人たちは、同情はしてくれても助けてはくれませんでした。どんな雑用でも快く引き受けて、朝から深夜まで全力で働いていたのですが、その上司から受けるパワハラ行為はずっと続いたのです。その時、僕は「やまない雨はない」とは言うけれど「降り続ける雨もある」ということを知りました。

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精神的に追い詰められた僕は、医者の派遣元である大学病院の医局長にメールを送ったのですが、完全に無視されました。誰も助けてくれる人はいませんでした。他の上司の先生も、そのパワハラドクターから”上を上とも思わない”ような扱いをされていたので、あえて自ら”火中の栗”を拾うようなことはしませんでした。いわゆる見て見ぬふりをするってやつです。そして僕はその時に気がついたのです。「やまない雨なら、雨宿りをするしかない」と。

僕はそれ以降、徹底的に（一部あからさまに）その上司を避けて仕事をしました。少しでも姿が見えたり声が聞こえたりすると、すぐにその場から逃げました。何を言われようが、どう思われようが、逃げて逃げて逃げまくったのです。もう僕にはやまない雨を避けて「雨宿り」をするしかありませんでした。

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幸い、大学の医局もその上司の問題行動に気がついてくれました。前の勤務先でも、前の前の勤務先でもずっと問題になっていたようで、重い腰をやっと動かしてくれたのです。そしてその上司の先生は、医局命令で遠〜い田舎の病院に一人医長として転勤させられてしまいました。その上司の先生の送別会はありませんでした。医師だけでなく、病院スタッフからも倦厭されていたその先生は、深夜に一人、夜逃げをするように荷物をまとめて病院を去ることになったのです。

「やまない雨はない」とは言いますが、実際は「降り続ける雨」もあると思います。もし本当に雨であれば、雨宿りをしたり、傘をさしたり、濡れても全力で走って前に進むといった手段があります。しかし、精神的に追い込まれている状態では、それらの代替手段に気がつくことができなくなります。僕は「逃げる」ことで自分自身を救うことができました。苦手な人や嫌な人は、避けて生活することが一番です。相手の性格や考え方は変えることができません。いつだって変えることができるのは「自分」だけですから。

それではまた^ ^