休みの日、特に何もすることがない時の僕ですが、リビングのソファーに寝転がり、コーヒーをちびちびと飲みながら、村上春樹の長編を読み耽ることがよくあります。本棚から適当に選んだ村上春樹の文庫本を片手に、天井の方を向いたり、窓の方を向いたり、背もたれの方に向いたりして、ソファーの上をゴロゴロと360°転がりながら、長編小説を読み続けています。
村上春樹作品は大好きで、ほぼ全ての小説を読んでいますが、そこに何か学びを求めている訳ではなく、感動を求めている訳でもなく、ただただその作品の世界に没頭し、のんびりと楽しみたいだけなのです。なので、何気なく読んでいて読み飛ばしてしまう文章があったとしても、その箇所に戻って読み直すということは一切しません。村上春樹の世界は、そんな感じでゆるく楽しめばいいと思っています。
そんな僕の姿を一番よく見ているのが、僕の妻です。長ければ半日くらいソファーの上で村上春樹を読み続けている僕を見ていた彼女が、ある日突然「村上春樹ってそんなに面白いの?」と尋ねてきました。彼女は普段、ほとんど本を読みません。そんな彼女に「村上春樹はすごく面白いよ」って、自信を持って薦めることができませんでした。彼女はリアリストなので、精神性世界と現実世界とが入り混じって、しばしば理解不能な世界になることがある村上春樹作品を「これ、すごく面白いわ」と感じてくれる可能性が低いと思いました。しかし僕があまりにも村上春樹ばかり読んでいるので、彼女なりに興味が湧いてきたようです。
なんでもいいから読んでみたいということで、僕は村上春樹のデビュー作である『風の歌を聴け』を渡しました。僕がリビングのソファーを占拠していたので、彼女は文庫本を持って寝室へ入っていきました。僕の予想は「書いてることがよくわからなかったわ」と言われて本を突き返され、それっきり終わりになる…だったのでしたが、数時間の沈黙の後、寝室から出てきた彼女は「読み終わったから、次の本は?」と、面白かったともつまらなかったとも何とも判断できないような表情で、次の作品を僕に求めてきたのです。僕は”青春三部作”の続きとなる『1973年のピンボール』を本棚から取ってきて、彼女に手渡しました。そして彼女はまた、本を片手に寝室へと消えたのです
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その後、彼女は”青春三部作”の最後の作品となる『羊をめぐる冒険』もあっという間に読んでしまいました。夜寝る時に読み始め、明け方まで読み続け(もちろん僕は寝ています)、そして読み終えました。村上春樹の”青春三部作”の率直な感想を聞いてみたところ、彼女は寝不足で充血した両方の目をカッと見開いて、こう答えました。
「こんな面白い小説、今までに読んだことがないわ」
僕は、この”青春三部作”には実は続きがあるんだということを話すと「今すぐ貸して」と言って、僕が読んでいた『ダンス・ダンス・ダンス』を奪い取り、また寝室へと戻って行ってしまいました。結局その一週間で、村上春樹の初期の作品を全て読んでしまいました。その週はずっと「この羊男は誰なの?」とか「死ぬのは五反田君でしょ?」といった調子で、彼女は村上春樹ワールドの中で生きていました。立派な”ハルキスト”になれたみたいです。仕事や家事をしながら睡眠時間を削って小説を読み続けた疲れもあり、しばらく村上春樹は休憩したいと言っていますが、一度読み始めてしまうと止まらなくなることをわかっているため、自衛のために自ら距離をとっているのだと思います。
村上春樹作品を読んだことがないけど、前からずっと気になっていて、いつか読もうと思っている人は、まず試しに”青春三部作”から読み始めてみてください。そして『ダンス・ダンス・ダンス』の順番に読んでみたらいいと思います。この四作品は一連のストーリーになっていて、読みやすくて本当に面白いです。寝不足の日々が続いてしまうかもしれないので、その点だけはご注意ください^ ^
(読む順番は、以下の順になります)
それではまた^ ^