🌀ぐるぐるねこ男ブログ🌀

ぐるぐるねこと一緒に暮らしている男の雑記ブログです。週2回(月・木)更新中🎵

教え子からの10年越しのサプライズ

ぐるぐるねこ男

 

医学部を目指して大学受験浪人をしていた時に、塾講師のアルバイトをしていました。自分が予備校に通うための学費と交通費を稼ぐために、ほぼ毎日4時間くらい働いていました。個別指導だったので、いろんな生徒を直接指導していました。まだ中学生なのに医学部を目指して必死に勉強していた女の子もいれば、膝上スカートで学校の宿題もまともにできないようなコギャル(死語)の女子高生もいました。そんな個性豊かな生徒の中で、僕の塾講師生活の中で一番印象に残った男子高校生が一人います。ここではM君と呼ぶことにします。

 

M君は地元の普通科高校に通う一年生の男の子でした。その高校は東大合格者が毎年何人も出るような名門校……ではなくて、ごくごく普通のレベルの普通科高校でした。M君はその学校の中でも、下から数えた方が早いくらいの成績でした。しかもM君のお母さんは、僕が子供の頃に通っていた小学校の先生でした。当時の僕は大学受験浪人をしている身分だったので、申し訳ないという思いもありましたが、任された以上なんとしてでも絶対にM君の成績を上げようと思ったのです。

 

しかし、僕の熱意はM君に伝わりませんでした。僕は塾講師として未熟だったかもしれませんが、できるだけM君のやる気を引き出そうと、手を替え品を替え、いろんなことを試してみました。しかし一年を通じてM君の成績は低空飛行を続けました。そして成績が上がらないどころか、徐々に服装が乱れ始め、悪い友人とタバコを吸うようにもなりました。本来ならあきらめても良かったのかもしれませんが、僕はM君の意外な一面を知っていたので、学習指導を続けました。その意外な一面とは”中原中也の詩集”をいつも鞄に入れて持ち歩いていたところです。

 

M君いわく「中原中也の詩だけは、めちゃ好きなんです」と。M君に触発され、僕も中原中也の詩集を買って読んでみたのですが、今ひとつ、いや、今三つ以上くらい理解ができませんでした。しかし、不良の道を進み始めていたM君にとって、中原中也の詩は心の支えになっていたのかもしれません。そうこうしているうちに講師である僕は医学部を受験し、無事合格することができました。そして、それと同じ時期にM君は塾通いをやめたのでした。

 

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それから月日が経ちました。僕は医学部を卒業し、医師として働き始めた頃にfacebookを始めました。昔の友人や知人に勝手に繋がってくれるので、何十年も音信不通だった人ともメッセージのやりとりができるようになり、すごい時代が来たものだと驚いていました。そんな中、電話番号を交換していたM君にも繋がることができました。僕は10年ぶりに「元気にしてる?」とメッセージを送ったところ、M君から次のような返信がありました。

 

「お久しぶりです!愛知県で中学校の教師をしています。その節はおせわになりました!」

 

あのM君が中学校の教師に!!?と驚きました。でも、あのM君ならあり得るなとも思いました。なぜなら、あれだけ中原中也の詩を熱心に読んでいたから。僕には理解できなかった中原中也の詩が、不良の道に進みかけていたM君を変えてくれたのかもしれません。読書の秋、本棚に積読(つんどく)になっている中原中也の詩集を、久しぶりに開いてみたくなった今日この頃でした。

 

 

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それではまた^ ^