ずっと以前、スーパードクターの元で手術の修行をしていたことがあります。そこは日本全国から治療困難な患者さんが押し寄せてくるような病院でした。そしてどんな救急患者さんも受け入れていたので、24時間365日、正にその字面通りに働き続けていました。
仕事が終わるのはいつも深夜でした。24時をまわって翌日の未明にはなんとか帰宅し、2〜3時間ほど寝てからまた出勤という生活だったので、自分の息子たち(当時、4歳と2歳)に会うのは朝食の時だけでした。
そんな忙しい僕(=父親)の姿を見て、息子たちなりに思うことはたくさんあったと思います。今回は当時の僕の日記から”子供たちの優しさ”をしみじみと感じることができた記載があったので、一部ですが紹介しようと思います。
***
🌀 お兄ちゃん(4歳)
今朝出勤する時に、玄関まで僕を追いかけてきて、ポケットに隠し持っていたアメを僕の方へ差し出してきた。
何をいうのかと思いきや、「父ちゃん、しんどい時はアメ舐めたらええんや。これあげるわ」
当直や手術で疲れきっていたのは事実であるが、そんなにしんどそうに見えたのかなと、少し反省。
しかし、久しぶりに元気が出た朝だった。
🌀 お兄ちゃん(4歳)
連日連夜の緊急手術。
家を出る前に息子(お兄ちゃん)が僕を玄関まで追いかけてきて、アンパンマンの水筒を僕に首にかけてくれた。
そして「喉乾いた時は、お茶飲むんやで」と言って僕を送り出してくれた。
中身は…空っぽだったけど(笑)
🌀 お兄ちゃん(4歳)
夜中に帰ってきて、朝早く起きることができなかった。
午前6時くらいに息子(お兄ちゃん)が僕の横に寝転がってきたのには気がついていたが、睡眠不足で起きることができなかった。
どれくらい眠ったのかわからなかったが、もう一度目覚めた時、息子が僕の方を向いて笑顔で寝転がっているのに気がついた。そして開口一番、
「ロボット作って、父ちゃん」
作りかけのプラモデルを一緒に作って欲しかったので、僕が起きるのをずっと横で待ってたみたいである。
時刻は午前7時30分。
疲れて寝ていたのをわかっていたのか、僕を起こさずに一時間以上ずっと顔を見ながら待っていてくれたみたいである。
🌀 お兄ちゃん(4歳)
出張先へ出発する朝、息子(お兄ちゃん)から僕の靴下を渡された。
受け取ってみると、ほんのり温かかった。
靴下が冷たかったから、自分のお腹で温めていたと言って、いつも通りニコニコ笑っていた。
🌀 弟(2歳)
緊急手術が入り、朝何も食べずに出かけようとしていたら、息子(弟)がナイロン袋にパンをいっぱいに詰め込んで、黙って僕に渡してきた。
🌀 お兄ちゃん(4歳)
今朝、出勤する時に「父ちゃんと一緒に暮らしたい」と言われた。
***
当時のメモ書きのような日記を読み返してみて、自分の息子たちの優しさをしみじみと思い出してしまいました。医師としては大きく成長することができたかもしれませんが、父親としては全然失格だったかもしれません。家庭のことを顧みず、20年近く走り続けてきましたが、これからはよき父親であり、よき夫になれるように努力しなければなりません。
「人を憂う思いが 優しさの花を咲かせる」
まずは自分自身のことを憂い、そして自分に優しくなることが必要なのかもしれません。皆さんも仕事だけに没頭しすぎて、自分の人生にとって本当に大切なものを見失わないように気をつけてくださいね^ ^
*****
<本日のブッダの言葉>
善をなすのを急げ。悪から心を退けよ。善をなすのにのろのろしたら、心は悪事をたのしむ。
『ブッダの真理のことば 感興のことば』中村 元 訳より
それではまた^ ^