ずっと以前勤めていた私立病院での話です。経営者がかなりのやり手だったので、日本でも有数の黒字病院でした。毎月の目標を達成できなかったり、未収の診察代が多かったりすると、事務方の男性が経営者に殴られるということもしばしばありました。(かなりのパワハラ病院です…)
そんな金回りの良い病院だったので、製薬会社からの注目度も高くなり、毎日多くのMRさん(製薬会社の営業担当者)が医者を訪問していました。訪問するMRさんが多い先生(=カネになる先生)になると、午前外来の終わり頃に10人以上のMRさんが列を成して待つレベルでした。
その病院では「新しい薬の治験」も行われていました。例えば患者さんに今まで処方していた薬を新しい薬に変えてみることで、どのような効果や副作用が現れるかということを調べたりしていました。そして患者さんをその治験にエントリーさせた場合、その担当の医者に製薬会社から謝礼金が支払われるのです。
それを利用(?)して大儲けをしたお医者さんがいます。そのお医者さんは株式投資で失敗し、数百万円ほど損したと噂されていた年配の先生でした。ある日、新薬の治験の担当医の募集が出た際に、その先生は率先して手を挙げました。患者さんを一人エントリーさせると5万円くらいの謝礼がいただけるという治験だったと記憶しています。
いざ治験が始まると、その先生は自分が外来でフォローしている患者さんを(躊躇することなく)次から次へとエントリーさせていきました。今まで自分の患者さんに飲んでもらっていた薬を全て新しい薬に変えてしまったのです。結局のところ、その先生は治験患者の登録件数で全国トップになりました。そして数百万円とも噂される莫大な謝礼金を受け取り、そのお金は株式投資の損失補填に使われたと噂されています…。(真偽は不明です)
新しい薬が高価なのは、こういった経費もかかっているからです。しかし、新しい薬の方が絶対に優れているということは決してありません。治験によって「それまで使われていた薬と同等の効果がある」ということが証明される”だけ”の新薬も多々あります。効果が同じなら安い薬の方がいいですよね?「新しい薬」にはくれぐれもご注意ください^ ^
*****
<本日のブッダの言葉>
功徳を得ようとして、ひとがこの世で一年間神をまつり犠牲をささげ、あるいは火にささげ物をしても、その全部をあわせても、(真正なる祭りの功徳の)四分の一にも及ばない。行ないの正しい人々を尊ぶことのほうがすぐれている。
『ブッダの真理のことば 感興のことば』中村 元 訳より
それではまた^ ^