🌀ぐるぐるねこ男ブログ🌀

ぐるぐるねこと一緒に暮らしている男の雑記ブログです(毎週月曜日に更新)

古人の跡を求めず、古人の求めしところを求めよ

ぐるぐるねこ男

 

以前の記事「”地獄の日々を思い出せ”という記録」でも紹介しましたが、僕は今、過去のデジタルデータの処分をしています。人間いつ死ぬかなんて分からないので、残しておくべきデータと、消しておくべきデータを分けて、着々と自分の過去を整理整頓しています。それはE-mailにも当てはまります。保存していた親友や恩師からのメールも削除していますが、その中に忘れられないメールがあったので、このブログで記録を残そうと思いました。ちなみにこのブログは、僕が死んでも”永遠に不滅モード”にする予定です。

 

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僕がまだ若かった頃の話になりますが、日本でもトップクラスの手術の達人の元で手術の勉強をしていたことがあります。その達人の元で一緒に手術を学んでいた同僚の先生の中に、一人だけ刺々しいタイプの先生(以下、A先生)がいました。A先生は僕よりもずっと早くその達人の元で修行を始めていたので、手術手技だけでなく、患者さんの術後管理のことなど細かいところまで僕よりもずっと先に進んでいました。僕がちょっとでも間違ったことをしていると、「そんなことも知らないの?勉強不足だよ。もっと俺みたいに努力しなきゃ」と叱られることもありました。

 

A先生から叱られること自体はあまり気にしなかったのですが、僕が気になったのはA先生の身なりや言葉使いでした。「そんなのA先生の自由じゃん」と言えばその通りなのですが、A先生は自分が師事しているその達人の、髪型や服装、そして言葉使いや行動パターンまで、ほぼ完璧にコピーして生きていたのです。ちなみに乗っている車まで買い替えてしまうほどの徹底ぶりでした。手術の腕前や学会発表のテクニックなど、僕なんかA先生の足元にも及ばないと自覚していましたが、そのコピーの徹底ぶりにはちょっとなあ…って当時は思っていました。

 

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月日はあっという間に流れ、達人の元から去る日がやってきました。送別会の席でかなり酔っ払ったA先生から「本当のこと言うとね、ぐるぐるねこ男先生の手術だけは、俺を脅かす存在だったよ」と、声をかけられました。本音かどうかは(泥酔していたので)分かりませんが、そのA先生の言葉を受けて、横に座っていた達人の先生が「うん、うん」と頷いてくれていたのには驚きました。勤務最終日を終えて、手術の勉強をさせてもらった病院を後にしました。それから数日後の話になります。突然、手術の達人の先生から一通のE-mailが届いたのです。そこにはこんなことが書かれていました。

 

先生がいなくなってとても残念に思います。僕は先生のことを気に入っていました。僕の真似をするのではなく、僕がやろうと思っていることをよく理解し、取り組むことができていました。道は険しいと思いますが、これからも頑張ってください。

 

僕はこのメールを読んだ時に、松尾芭蕉が述べたと言われてる「古人の跡を求めず、古人の求めしところを求めよ」という言葉を思い出しました。これは、自分の師事した達人の偉業を追い求めるのではなくて、その達人が理想とするものこそが、追い求めるべきものなのだという意味になります。達人のモノマネをしていても、決して達人になることはできません。A先生のことを否定する訳ではありませんが、僕は手術の達人の元で、本当によい修行ができてたんだなあって、そのメールを見て思い出しました。(そして、そのメールも削除しました)

 

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それではまた^ ^